宮崎西部不動産の飯干です。
皆さんは「字図(あざず)」と言う言葉はご存知でしょうか?
別名「公図(こうず)」とも呼ばれていますが、土地の位置や形状を確定するための法的な図面のことで、法務局に備え付けられています。
現地を正確に測量して作成された、不動産登記法第14条第1項に規定される「地図」とは異なり、字図は明治初期に地租徴収のために作成された図面が基となっているから、現地との位置や境界が著しく異なっていることがあります。
これを「字図混乱(あざずこんらん)地域」と言います。
「地図混乱(ちずこんらん)」や「公図混乱(こうずこんらん)」とも表記されるのですが、不動産登記事項証明書や法務局にある地図に記載されている内容と、実際の土地の位置や形状が異なっているので、この地域内で不動産取引を行う際は注意が必要です。
今から20年ほど前、まだ私が住宅営業マンだった頃の話です。 不動産業者から紹介を受けた土地に、お客様の新築を建てさせていただきました。
何事もなく引き渡しが行われる予定でしたが、建物の表示登記をする際に問題が発生。 土地家屋調査士から建物の登記ができないと言われたのです。 その時、初めて「字図混乱地域」という言葉を聞きました。
建築した土地は2筆に別れていたのですが、地番が連番ではありませんでした。 例えば「150-1」、「150-3」みたいな感じで番号が飛んでいたんですね。 ただ、これは合筆等で消失している場合もあるので、その時は特に気にもしていませんでした。
しかし、土地家屋調査士によると「本土地は字図混乱地域にあり、地図に記載されている内容と、実際の土地の位置や形状が異なっている。おそらくこの2筆の間にもう一筆土地があるはず。その土地(地番)を見つけて、建築主の名義にしないと法務局で登記ができない。」という非常に困った事態に陥りました。
「地図混乱地域での問題を解消するには、地図の訂正が必要。地域内の利害関係者全員の合意が必要であり、もし目的の土地が第三者名義だった場合、さらに費用が発生する可能性がある。いくら費用を要するか、まったく分からない。」
仲介に入った不動産業者にも相談、土地家屋調査士や弁護士事務所まで訪ねて解決策を模索しました。
結果的には売主側の不動産業者と土地家屋調査士の協力により、最小限の費用で地図の訂正を行い、失われていた地番を建築主の名義にすることができました。
ただ、私の場合は本当に運が良かっただけで、全国的には損害賠償等や紛争が生じた事例も多々あります。業界27年になりますが、本件含めて2回くらいしか字図混乱地域には出会っていません。それくらいレアなケースではありますが、宮崎県内にも存在はしていますので、字図と土地の形状が著しく異なっていたり、地番が重複している場合等は取引物件に影響はないか注意が必要です。
この経験が糧になり、私は不動産の調査を時間をかけて慎重に行うようにしています。
このような不測の事態から売主様と買主様を守ることも、私達 仲介業者・宅地建物取引士の存在意義と使命でもあると思うのです。